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吃音当事者のよっし~と申します。吃音を抱えていると、心無い人たちから笑われたり真似されることがあると思います。かつての私もそうでした。しかし、同時に 労いの言葉をかけてくれる人もいました。今回は私が人前で発表したときの出来事をお話したいと思います。
吃音で原稿の音読が苦手な私。600人の前で発表することに!
私は昔から、真面目なイメージを持たれていました。
実際、大人しめな性格だったせいで、たびたび委員長などの仕切り役にされることが多かったです。
高校に入学して半年が過ぎた時、担任に呼び出されました。
後期の学級長に指名されたのです。
「真面目でちゃんとやれそうだから」
そう言われて拒否権がない私は、仕方なく引き受けました。もう1人やってくれる女子がいるらしいのです。
しかし、なんでそんなに薄っぺらな理由で指名するんだろうと、少し腹立たしかったです。
「発言する機会なんてないだろう。」
その時はそう考えていました。
しかし、現実はそう甘くはなかったのです。
学級長になってすぐに、1泊研修にいくことになりました。どうやら、仲間の親睦を深めるのが目的のようです。
その研修では、クラスごとに指定のテーマについて調べ、資料を作って発表することになりました。
私はその時、人生で3本の指に入るほどの冷や汗をかきました。
なぜなら、発表は学級長の2人が行うというのです。しかも学年全員の前で。
私は原稿の音読が苦手中の苦手でした。
しかも、約600人の前で読み上げなくてはいけません。
小学校、中学校、高校と国語の音読の度に冷や汗をかいてきた私にとって、死にたくなるようなことでした。
必死に練習した発表前夜、高校に入って初めて泣いた。
発表の原稿を渡されたのは本番の3日前でした。
原稿を見てみると、おそらく普通の速度で読み上げても、持ち時間いっぱいかかるであろう文章量でした。
持ち時間をオーバーしても特に罰則はありませんが、避けたほうが良いようでした。
つまり、それは読み上げる際に1度もつっかえてはいけないということでした。
発表前日、自宅で渡された資料を読みながら必死に練習しました。
どの文字でつまづきそうだとか、ここは読みやすいからスピードを上げて読もうなどと色々な作戦を立てました。
他の人なら吃音であることを話したり、当日休んだりしたかもしれません。
しかし、私にはどちらもする勇気を持てませんでした。
吃音のことは誰にも相談していませんでしたし、する気もありませんでした。
その夜、私は高校に上がって初めて泣きました。
失敗を笑う人もいたが、労いの言葉をかけてくれる人もいた。
1泊研修当日、私は発表のことで頭がいっぱいのままバスに乗りました。
正直、バスの中でやったレクリエーションは記憶にありません。
それくらい必死だったのです。
バスが発表をする会場に近づいていくたび、心臓の鼓動が激しくなっていきました。
いよいよ会場の大きなホールに着き、指定された席に座り、発表が始まりました。
徐々に順番が近づいていき、ついに自分たちの番になりました。
ステージに立ってスタンバイすると、学年全員が私を見ています。
覚悟を決め、マイクを持ちました。
もう1人の学級長と交互に文章を読んでいきました。
もう何を読んでいるのかはよく分かりません。
そのくらい必死だったのです。
そのおかげか、自分でも驚くほど発表がスムーズに進んでいきました。
このままいけると思ったその時、突然「す」の音が出てこなくなりました。
息だけがスーッと漏れてしまったのです。
「しまった。」
そう思いましたが、ここまで読んだから、読み切ってしまおうと気を取り直しました。
その時、誰かが吃った私の真似をしました。
それに連鎖するように、何十人の人々が真似をしてきたのです。
こんなに頑張って準備したのに、吃ったせいで笑われてしまいました。
発表が終わり、悔しさを抱えながら席に戻ると、クラスメイトの何人かが「お疲れ!頑張ったな!」と言ってくれました。
クラスメイトには吃音のことを話していなかったので、私が吃音で悔しい思いをしたことなど知らないで言っていたのですが、思わず泣きそうになりました。
人の失敗を笑う人もいますが、労いの言葉をかけてくれる人もいたのです。
そのありがたみで胸がいっぱいになりました。
吃音のことを調べる中で、吃音者の多くは表現力やリーダーシップがある人が多いということを知りました。
もし、私のように人前で発言しなければいけない人は、どうか頑張って自信を持って欲しいと思います。(よっし~)
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