吃音を抱えている人の中には音読が苦手な方も多いと思います。
私もそんな吃音当事者の1人でした。今回は音読が苦手だった私が見つけた音読のコツを紹介します。
私の体験談と音読で吃音頻度が減少したテクニックや研究も紹介します。
この記事を読んでいる人が、少しでも音読の不安を解消してもられば嬉しいです。
吃音者の音読はかなりのストレス
学生時代、私が苦手だったことは音読です。
小学生の時から、ずっと苦手でしたが中学生までは何とか吃音を隠して乗り越えました。
そのため、高校生になっても何とか乗り越えれるだろうと思っていました。
しかし、現実はそんなに甘くないことを知り、その衝撃は社会人になった今でも鮮明に記憶に残っています。
一般的に音読といえば国語の時間を想像する人が多いかもしれません。
しかし、私の高校では国語をはじめ社会、歴史、化学、生物でも音読をする機会がありました。
吃音者にとって音読は、大きなイベント行事に相当するくらいストレスになるのではないかと私自身ずっと思い続けています。
音読がある日は学校が憂鬱だった。
私がかつて通っていた学校の歴史の授業は、毎回クラスの全員が歴史の教科書を順番に読むことになっていました。
歴史の授業は週に2回、火曜日と金曜日にありました。その日は朝から憂鬱で学校への足取りが重かったです。
実際は自転車通学だったので、スイスイとペダルを漕いでいましたが。
冗談はさておき、私はいつも音読をする時に、必ず行うことがありました。恐らく、皆さんもしていることではないかと思いますが、自分の読むところを確認することです。
最初の部分を読んだ人を確認し、そこから自分の席までの順番を数えて、自分が読む部分を確認します。そして、小声で読んでみて、言いづらそうな言葉や吃りそうな言葉を探し出します。言いづらい、吃りそうな言葉をいかに吃らずに言えるかを考えます。
私が読むまで残り5人くらいになると、心臓の鼓動音が聞こえるくらい心臓がバクバク鳴り出し、平然を装いながらも内心はクラスの中で1番緊張していたと思います。
そして、残り4人、3人と順番が近づいてくると、読んでいる人の声が耳に入ってこなくなります。
自分の読む部分ばかりを見て「吃るな吃るな、普通に読め、落ち着け」と自分に言い聞かせていました。
上手くいくと自己暗示をした
しかし、残り1人になると緊張してアドレナリンが出ていたのか分かりませんが「読めるでしょ」「なるようになる」「すぐ終わる」と気持ちが変わりました。
私に順番が回ってくると、言いづらい言葉を前の言葉と繋げて読むことで、吃ることなく私の番は終わりました。
終わった直後は、緊張からの解放で嬉しいの一言でした。
しかし、時間が経つにつれて「しっかり読めばよかった」「自分って情けない」と自己嫌悪の気持ちが湧いてきました。
音読1つで、なぜあんなにも緊張していたんだろうと馬鹿馬鹿しく思う気持ちもあり、複雑な気持ちになりました。
こんな経験を、他の授業でも幾度となく味わってきました。
吃音というだけで、なぜこんなにも苦しまないといけないのかと考えることもありました。しかし、考え続けてもそこに答えはないと自分の中で腑に落とし込みました。
音読が苦手だった私が実践していた音読のコツ
音読の際に、私がよく使っていた方法をご紹介します。
その後に、実際に音読で吃音が緩和した研究のテクニックも紹介します。
私は、漢字で詰まった場合は、読めないフリをしました。そして、周りの人が言ってくれた言葉をオウム返しすると言うことができました。
また、強弱をつけて読むと吃音が出にくかったです。一定のリズムよりも強弱をつけたほうが吃りにくかったので、私はその方法をよく使っていました。
今では吃音症があっても、今の自分に何ができるのだろうかということを考えて生活をしています。
吃音者の音読が改善した3つのテクニック
この研究では、20人の吃音者を対象にしました。吃音者は、日本語話者であること、18歳以上であること、他の言語障害や聴覚障害や精神障害がないことが条件でした。
吃音者は、インターネット上で募集しました。応募者は、オンラインで吃音度チェックリスト(Stuttering Severity Instrument-4)を回答しました。
このチェックリストは、吃音の頻度や持続時間や種類や影響度などを評価するものです。チェックリストのスコアが10点以上であることが参加資格でした。スコアが10点以上だった20人の吃音者が実験に参加しました。
実験内容
実験はオンラインで行いました。
吃音者は自宅からパソコンやスマートフォンなどで接続しました。実験では、吃音者に4つのタスクを行ってもらいました。
1つ目はベースラインタスクです。これは、吃音者に自由に話してもらうタスクです。
2つ目はゆっくり話すタスクです。これは、吃音者にゆっくりと明瞭に話してもらうタスクです。
3つ目はリズム話すタスクです。これは、吃音者にリズムや抑揚をつけて話してもらうタスクです。
4つ目は合わせ話すタスクです。これは、吃音者に他人の声や音に合わせて話してもらうタスクです。
各タスクでは、10個の文を読んでもらいました。文は日常的な内容のものでした。
例えば、「今日は晴れているから散歩に行こう」とか「私は昨日カレーを食べました」とかです。文はランダムに提示されました。吃音者は文を読む前に1秒間待ち、読み終わったら次の文が表示されるまで待ちました。読み方はタスクに応じて変えてもらいました。
実験結果すべての方法で効果があった
実験中に、吃音者の声を録音しました。録音した声から、吃音の頻度や持続時間や種類や影響度などを分析しました。
分析の結果、ゆっくり話すタスクとリズム話すタスクと合わせ話すタスクでは、ベースラインタスクよりも吃音が減少することがわかりました。
特に、合わせ話すタスクでは、最も大きな効果が見られました。
この研究では、オンラインで行った4つのタスクが吃音にどのような影響を与えるかを調べました。
結果として、3つのタスクが吃音を減少させることが示されました。このことから、オンラインで提供できる吃音療法の可能性が示唆されました。
音読の練習すると吃音が減るデータ
他にも音読で役立つ研究も紹介します。
結論から言えば、音読で読む文章を事前に練習すると吃音が減少するということがわかっています。
実験内容の紹介
この研究では、吃音者の発話流暢性に影響する要因として、文章の難易度と繰り返し回数を検討しました。
吃音者10名に対して、難易度の異なる3種類の文章を読ませ、それぞれ1回目と5回目の発話を録音しました。録音した発話から、非流暢な部分(連発・伸発・難発)の頻度と持続時間を計測し、文章の難易度と繰り返し回数による違いを分析しました。
5回読めば吃音頻度が減少する
その結果、文章の難易度が高いほど非流暢な部分の頻度と持続時間が増加することがわかりました。
また、同じ文章を5回目に読むときには1回目に比べて非流暢な部分の頻度と持続時間が減少することがわかりました。
これらの結果から、吃音者は文章の難易度に応じて発話計画や制御に負荷がかかり、非流暢さが増加すると考えられます。一方、同じ文章を繰り返すことで発話計画や制御が容易になり、非流暢さが減少すると考えられます。
まとめ
この記事では、吃音を抱える人が音読を苦手とする理由や、私が実践していた音読のコツについて紹介されています。
また、20人の吃音者を対象に行われた実験結果も紹介されています。ゆっくり話すタスクやリズム話すタスク、合わせ話すタスクが吃音を減少させることが示されました。これからオンラインで提供できる吃音療法の可能性が示唆されました。
この記事が少しでも、吃音の発表に悩む人に役立てばうれしいです。
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