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吃音を抱えて話すことに自信を持てなくても、視野を広くすると色々な長所が見えてくることがあります。今回は私が吃音を抱えながらも、長所を見つけて伸ばすことができたお話をしていきたいと思います。
吃音で自信を失い、自分の長所を見つけられなかった小学生時代。
小さいころから吃音を抱えて、話しづらさに悩んできた私は自分の長所を見つけられない子供でした。周りの子は走るのが早かったり、面白い話をしたり自分の長所を存分に発揮して、周りもそれを認めていました。
学校で自分の長所を書く作文があった時には、親から冗談半分に言われたマイペースな性格について書いた記憶があるくらいです。
そんな私に長所が見つかったのは小学4年生の頃のことでした。夏休みに学校から献血の啓発ポスターコンクールの応募用紙を渡されたことがきっかけで、自由課題の啓発ポスターを描いてみることにしました。
献血について詳しく知らなかったのでポスターコンクールの募集要項を読んだり、図書館で何冊か本を借りて読んだりしました。
血液の病気にかかった子供が、闘病の末に献血の力を借りながら病気を乗り越えたという体験記を読んだ後は感動し、こんなに大変な状況の中で頑張っている人がいるなら、自分も何かしたいと強く思った記憶があります。
しかし、実際にどんなポスターを描けば、多くの人に見てもらえるだろうという悩みも同時に沸き上がりました。
声が上手く出なくても伝えたい思い
小学3年生の頃に吃音がうつるという噂がたったことで苛めを受けていた私は精神状態が悪く、よく明け方まで寝付くことができませんでした。
夏休みも相変わらず寝ることができずに、枕元にノートを置いて、暗い寝室でポスターのアイディアを考えていました。
献血で救われた子供の写真が脳裏にこびり付き、世界中に何人の人たちが同じように献血を必要としているのだろう、何とかして生きる力を届けたいと居ても立っても居られなくなりました。
小学4年生の私は献血の啓発ポスターにその思いを託すことにしました。翌日「届けよう、生きる力を」というタイトルの啓発ポスターを一日かけて描きあげました。
私の声は文章を伝って周りの人に知ってもらえている
秋になったある日の放課後、職員室に呼ばれました。そこで夏休みの献血啓発ポスターが日本赤十字社のコンクールで最優秀賞をとったということを伝えられました。
クラスメイトには絵が上手い人が沢山いて、私はお世辞にも絵が上手とは言えない部類でした。そのため、啓発ポスターが賞をとったと聞いたときには腰が抜けるかと思うほど驚きました。
私が驚きで固まっていると、担任の先生が言いました。
「奥村さんは口数は多いほうではないけれど、文芸の課題を読むと考えていることが良くわかって嬉しい」
その瞬間、吃音でうまく声は出せないけれど、私の声は文章を伝って周りの人に知ってもらえているんだと感じ涙がでてきました。
長所を磨き続けて、大学の特別推薦へ
文章が自分の思いを伝える唯一の手段だと知った私は、それから文字を書く勉強を始めました。学校の壁に掲示された同級生の作文を眺めたり、辞書を引いたりして自分の知らない言葉を沢山取り入れました。
その努力が功をなし、小学生を卒業するころには勉強机の上には文芸賞の受賞トロフィーや賞状が並ぶようになりました。
高校に上がっても文芸の勉強は続けました。文芸賞にも応募し続け、3年連続で大きな賞を受賞したことをきっかけに志望大学から特別推薦を受けて試験なしで入ることもできました。
私にとって文芸は、伝えられない言葉を周囲に広める大切な役目を持ったものでした。そして、その思いは私の長所になり、将来を切り開く力をくれました。
今後も長所を磨くことで、自己実現をしていけたらと思っています。
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