子どもの吃音は、自然に治ることが多いと言われています。
しかし、親としては、どうしたら良いのか、どうすればいけないのか、悩むこともあるでしょう。この記事では、子どもの吃音が自然治癒する割合や条件、親ができる対応や支援、避けるべき行動などについて紹介します。
子どもの言語発達やコミュニケーションを大切にする家庭環境を作るために、参考にしてみてください。
吃音の自然治癒について
自然治癒の割合と条件
子どもの吃音は、約70~80%が自然治癒するという研究結果があります。つまり、特別な治療や指導を受けなくても、成長とともに吃音が消えていく可能性が高いということです。
しかし、自然治癒するかどうかは、個人差があります。自然治癒する条件としては、以下のようなものが挙げられます。
- 発症年齢が低い
- 女児である
- 吃音を持つ親族がいない
- 吃音の程度や種類が軽い
- 吃音に対する自覚や不安が低い
- 言語能力や知能が平均以上である
- 家庭や学校などの環境にストレスが少ない
これらの条件は、すべて満たさなくても自然治癒する可能性はありますし、逆に満たしていても自然治癒しない可能性もあります。しかし、これらの条件を参考にして、子どもの吃音に対する親の理解や対応を見直すことは有意義だと言えるでしょう。
発症年齢が低い場合や女児、親族の影響
自然治癒する条件の中でも、特に重要な要素とされるのが、発症年齢です。一般的には、吃音が始まった年齢が低ければ低いほど、自然治癒する可能性が高くなります。
特に3歳以下で吃音が始まった場合は、ほとんどの場合自然治癒します。逆に4歳以上で吃音が始まった場合は、自然治癒する可能性は低くなります。また、5歳以上で吃音が続く場合は、専門家に相談することをおすすめします。
また、女児の方が男児よりも自然治癒する割合が高いというデータもあります。これは、女児の方が男児よりも言語能力や感情表現能力が早く発達することや、女児の方が男児よりも社会的な期待やプレッシャーを感じにくいことなどが理由と考えられます。
さらに、吃音を持つ親族がいるかどうかも、自然治癒に影響します。吃音には遺伝的な要因も関係しており、親や兄弟姉妹などに吃音者がいる場合は、自然治癒する可能性は低くなります。
吃音の自然治癒を促す時期と対応
重要な時期:3~5歳
子どもの吃音は、3歳から5歳の間に発症することが多いです。
この時期は、言語発達の急速な成長期でもあります。子どもは、新しい言葉や文法を覚えたり、思考や感情を表現したりする能力が高まっていきます。
しかし、その分、言語的な負荷も増えていきます。そのため、言葉を話すときに一時的に吃音が出ることがあります。これは、正常な発達過程で起こる一過性の現象であり、心配する必要はありません。
しかし、この時期に親ができる対応は非常に重要です。親の対応によっては、子どもの吃音が悪化したり、持続したりする可能性があります。
逆に、親の対応によっては、子どもの吃音が改善したり、自然治癒したりする可能性もあります。では、具体的にどのような対応が良いのでしょうか?
良い対応:自信や自尊感情を高める支援
子どもの吃音に対して最も大切なことは、子どもの話す内容や気持ちに関心を持って聞くことです。子どもは、自分の話し方に不安や恥ずかしさを感じることがあります。
そのため、親は子どもの話し方を否定したり批判したりせずに、肯定的に受け止めてあげる必要があります。具体的には、
- 子どもの話す内容や気持ちに関心を持ち、聞き手として積極的に反応する
- 子どもの話すスピードやリズムに合わせて話す
- 子どもの話す様子や表情を見て笑顔で接する
- 子どもの話す能力や努力をほめて認める
- 子どもの話す機会を増やす
これらの対応は、子どもに安心感や信頼感を与えるだけでなく、言語能力やコミュニケーション能力を向上させる効果もあります。
安心感を与える家庭環境の整備
子どもの吃音が自然治癒するためには、家庭環境も重要な役割を果たします。家庭環境が不安定だったり、ストレスが多かったりすると、子どもの吃音が悪化したり持続したりする可能性があります。
そのため、親は以下の点に注意して家庭環境を整える必要があります。
- 家族間で暴力や口論がないようにする
- 子どもに過度な期待や圧力をかけないようにする
- 子どもに十分な睡眠や休息をとらせるようにする
- 子どもと一緒に楽しい時間を過ごす
これらの対応は、子どもに安心感や信頼感を与えることで、吃音の自然治癒を促す効果があります。親は子どもの吃音に対して冷静で優しい態度で接することが重要です。
吃音に悪影響を与える行動と改善方法
悪い対応:急かす、言い直し、遮る
子どもが話そうとしているときに、親が急かしたり、言い直させたり、遮ったりすることは、子どもにとって大きなプレッシャーになります。
これらの対応は、子どもの自信や自尊感情を傷つけるだけでなく、吃音を悪化させる可能性もあります。親は、子どもの話をじっくり聞いてあげることが大切です。
不安を取り除くための親の心構え
子どもの吃音に対して、親自身が不安や心配を感じることは当然です。しかし、その気持ちを子どもに見せてしまうと、子どもも不安になってしまいます。
親は、子どもの吃音に対して冷静で前向きな態度を示すことが必要です。また、子どもの吃音に過剰に反応したり、否定的なコメントをしたりしないことも重要です。
親子間のコミュニケーションの重要性
子どもの吃音は、親子間のコミュニケーションが不足している場合に起こりやすいという研究結果もあります。親は、子どもと積極的に話したり聞いたりすることで、子どもの言語能力や表現力を育てることができます。
また、子どもの気持ちや考えを理解したり共感したりすることで、子どもに安心感や信頼感を与えることができます。
吃音を改善させる言語発達を促す活動
読み聞かせや歌で言語能力を向上させる
読み聞かせや歌は、子どもの言語能力を向上させる効果的な方法です。読み聞かせでは、親が本の内容や登場人物について話したり、子どもの感想や質問に答えたりすることで、子どもの語彙や理解力を豊かにします。歌では、親が子どもと一緒に歌ったり、手遊びや体操をしたりすることで、子どもの発音やリズム感を養います。読み聞かせや歌は、子どもが楽しみながら言葉に親しむことができるので、吃音の改善にも役立ちます。
4-2. 二人読みや斉読で自然な言葉の流れを学ぶ
二人読みや斉読は、子どもが自然な言葉の流れを学ぶ方法です。二人読みでは、親と子どもが交互に本を読んだり、役割分担して読んだりします。これにより、子どもは親の発声やイントネーションを真似したり、自分のペースや声量を調整したりすることができます。斉読では、親と子どもが同時に本を読みます。これにより、子どもは親と一緒に言葉のリズムや抑揚を感じたり、息継ぎのタイミングを学んだりすることができます。二人読みや斉読は、子どもがスムーズに話すことに自信を持つことができるので、吃音の改善にも役立ちます。
親子で楽しむ言葉遊びの提案
言葉遊びは、子どもの言語発達を促す楽しい活動です。言葉遊びでは、親と子どもが韻やなぞなぞなどの遊びをしたり、自分でオリジナルの言葉を作ったりします。これにより、子どもは言葉の音や意味に興味を持ったり、創造力や表現力を発揮したりすることができます。言葉遊びは、子どもが気軽に話すことに慣れることができるので、吃音の改善にも役立ちます。
まとめ:吃音の自然治癒を促す対応と親の役割
この記事では、吃音の自然治癒について説明しました。自然治癒とは、吃音が自分で治ることを意味します。自然治癒は、子どもの成長や発達に伴って起こる可能性があります。しかし、自然治癒が起こるかどうかは、個人差があります。自然治癒の可能性を高めるためには、親ができることがあります。
自然治癒の理解とその可能性
まず、親は自然治癒について正しく理解する必要があります。
自然治癒は、吃音が完全に消えるということではありません。吃音は、言語やコミュニケーションの一部であり、時々出ることがあります。
自然治癒は、吃音が日常生活に影響を与えなくなるということです。つまり、子どもが話すことを楽しんだり、自信を持ったり、人と関わったりできるようになるということです。
自然治癒の可能性は、子どもの年齢や性別、吃音の特徴や程度、家族や周囲の反応などによって変わります。
一般的には、吃音が始まってから1年以内に自然治癒する確率が高いと言われています。また、女の子よりも男の子の方が自然治癒する確率が低いと言われています。さらに、吃音が単純な繰り返しや伸ばしであればあるほど、自然治癒する確率が高いと言われています。
親ができる適切な対応と支援
次に、親は子どもの吃音に対して適切な対応と支援をする必要があります。適切な対応と支援とは、子どもの話すことを否定したり、急かしたり、注意したりしないことです。逆に、子どもの話すことを肯定したり、待ったり、聞いたりすることです。具体的には、以下のような方法があります。
- 子どもの話す内容に興味を持ち、目を見て聞く。
- 子どもの話すスピードやリズムに合わせて話す。
- 子どもの話す機会を作り、話題を提供する。
- 子どもの話す能力や努力をほめる。
- 子どもの感情や気持ちを受け止める。
- 子どもの吃音について無理に直そうとしない。
言語発達やコミュニケーションを大切にする家庭環境の作り方
最後に、親は言語発達やコミュニケーションを大切にする家庭環境を作る必要があります。言語発達やコミュニケーションを大切にする家庭環境とは、次のような特徴を持つものです。
- 子どもの話を聞くときは、目を見て、相槌や感想を返すなど、興味や理解を示す。
- 子どもの話に対して、否定的な評価や批判、訂正、命令などを避ける。
- 子どもの話題に合わせて、自分の経験や感想などを共有する。
- 子どもの話が途切れたら、質問やコメントで話を引き出す。
- 子どもが話したいときは、忙しくても時間を作って聞く。
- 子どもが話したくないときは、無理に話させない。
- 子どもが吃音になったときは、焦らずに静かに待つ。
- 子どもが吃音になったときは、話の内容や気持ちに注目し、吃音そのものに言及しない。
- 子どもが吃音について悩んだり不安になったりしたら、優しく励まし、必要なら専門家に相談する。
以上のような家庭環境は、子どもの言語発達やコミュニケーション能力を育みます。また、子どもの自信や自己肯定感を高めます。これらは、吃音の自然治癒にとって重要な要素です。
親は子どもの吃音に対して過剰に反応したり心配したりせず、子どもの話を楽しく聞いてあげることができれば十分です。
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