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吃音で悩んでいると、自分の良いところよりも欠点に目が行ってしまうことがあります。私は中学時代の部活で問題に対処したことを通して、自分の長所に気が付くことができました。今回はそのお話をしたいと思います。
なんで私だけ上手く話すことができないんだろう…同級生と比べて劣等感を抱く毎日。
中学1年生の春、私は部室で3年生の先輩に叱られていました。部活に入りたてで、やるべきことが分からずオロオロしていたからです。
「なにか手伝うことはありますか?って何で先輩に聞けないの」
その時、私は吃音がひどい時期で声を出すことができませんでした。しかし、馬鹿にされることを恐れて、あえて無口な人のように振舞っていました。
叱られたあと、先輩と楽しそうに話している同級生を見て、なんで私だけ上手く話すことができないんだろう…と悔しく思いました。
周りを見て行動することで、問題があったときに早く察知できるようになった。
中学3年生になるまで、相変わらず口数は少ないままでしたが、その分周りに迷惑をかけてはいけないと常に周りを見て行動するように心がけました。
部活の雰囲気に慣れてくると、先輩達の性格や立ち位置が段々見えてきます。人間関係を観察するスキルが身についてくると、問題があったときも早く察知することができるようになりました。
いつも明るい先輩の顔色が良くないときは、皆がいないときに相談に乗ることもありました。
明るく元気な部員にも深い悩みがあった。自分の吃音の悩みと重ねて一緒に泣いた。
中学2年生の時に、事件が起きました。1年生の部員が、部室で泣いていたのです。話を聞くと、同じ1年生の部員に最近酷いことを言われて辛いということでした。
とりあえず2人に話を聞くと、お互いに顔を合わせることも難しいほどに亀裂が入っていることが分かりました。しばらくの間、お昼休みは1年生のところに通って2人別々に相談に乗り、気持ちを受け止めることになりました。
よく話を聞いてみると、明るく元気な2人にも深い悩みがあることがわかりました。私は、吃音が酷くて上手い励ましの言葉もアドバイスもしてあげることができませんでした。ただ、自分の吃音の辛さと重ね合わせて、時に一緒に涙して耳を傾けていました。
「あの時、先輩が話を聞いてくれなかったら死んでいたかもしれない。」
それから、残念ながら2人のうち1人は部活を離れる決断をしました。しかし、部活を辞めたあとも年賀状をくれたり、クラスに遊びにきてくれたりして私を慕ってくれました。
「あの時、先輩が話を聞いてくれなかったら私は死んでいたかもしれません。」ある日、その子から言われました。
うわべだけの励ましの言葉より、一緒に泣いて話を聞いてくれたことが、その子にとって何より救いだったとのことでした。
私は吃音があって上手くアドバイスをすることができずに歯痒い思いをしていたので、ただ傾聴することだけでも人の心を軽くできたということに驚きました。
中学3年生で副部長に
中学3年生の春、入部当時はオロオロするだけだった私は、部活の副部長を務めることになりました。
1年間、部員同士で揉め事もありました。その時は以前、後輩の相談に乗っていたことを思い出して、話を聞くことに徹しました。
部員たちも何かあると私に相談に来てくれることが増えて、1年前のように大事になる前に対処することができるようになりました。
吃音があるからこそ見つけられる長所は必ずある。
私はこの部活の経験を通して、吃音があるからこそ人の痛みを敏感に感じ取ることができると気が付きました。このスキルは今の吃音当事者支援の仕事にも生かすことが出来ています。
吃音があるからこそ見つけられる長所は必ずあります。あなたも色々な経験を通して自分の長所を見つけてみませんか?
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