吃っても頑張った姿勢は評価される。職場体験で学んだ大切なこと - HAPPY FOX

吃っても頑張った姿勢は評価される。職場体験で学んだ大切なこと

  1. 吃音の体験談
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吃音を抱える学生の中には、将来社会人になったときのことを考えて、不安になってしまう人も多いのではないでしょうか?私は中学生時代の社会見学を通して、吃音があっても前向きに働くイメージを持つことができました。今回はそのお話をしたいと思います。

吃音があっても電話をすることができた!達成感を持った職場見学のアポ取り。

吃音があっても電話をすることができた!達成感を持った職場見学のアポ取り。
写真はイメージです。

私がかつて通っていた中学校では、地域のお店や施設に職場見学をするという授業がありました。興味がある職場を探すところから、アポとり、実際の見学、お礼状の送付まで全て生徒自身が行うというものです。

中学2年生の私は、医療系ドラマをよく見ていて医療現場に憧れていたことから、地元で一番大きな総合病院に行くことに決めました。

多くの吃音者と同じように、私も電話が大の苦手でした。クラスメイトの家に連絡網を回すときでさえ、上手く自分の名前を言うことができず、イタズラ電話だと思われて切られてしまうこともありました。

外部の方が関わる授業ということもあり、先生は何度も「くれぐれも受け入れ先に迷惑をかけないように」と言っていました。その言葉があったので、もしアポ取りの時に声が出なくてイタズラ電話だと思われたら大変なことになる、と子どもながらに不安になりました。

私は人前で吃音が出やすいタイプでした。そのため病院へのアポ取りは誰もいない放課後に、学校の受付前の古い公衆電話で行うことに決めました。受話器を取って10円玉を入れようとしましたが、緊張で手が震えて何度も受話器を置きました。

意を決して受話器を耳に当てると、呼び出し音よりもずっと早いテンポで自分の心臓の鼓動が聞こえてきました。

「お電話ありがとうございます。〇〇総合病院交換です。」

受付の女性が電話に出て、いよいよ自分の名前を名乗るときがきました。しかし、口を開けても声がでません。相手の、もしもし、という戸惑った声が聞こえてきます。

やっとの思いで自分の名前を名乗り、職場見学がしたいことを告げました。電話を終えると、受話器を握っていた手は汗でびっしょりになっていました。私は電話ができたことに驚きつつも、嬉しさで興奮しながら帰宅しました。

吃音が出て上手く話せない…それでも耳を傾けてくれた受け入れ先の方々

吃音が出て上手く話せない...それでも耳を傾けてくれた受け入れ先の方々
写真はイメージです。

社会見学当日、私は30人ほど座れそうな大きな病院の会議室に座っていました。シーンとする室内とは対照的に自分の心臓の音が聞こえました。

そこに病院の先生と助手の方が入ってきました。そして緊張している私を見ると、笑顔で迎えてくださいました。私は失礼のないようにと、先生から教わった丁寧な挨拶をして席につきました。

私は、緊張で体中の汗が噴き出るのを感じながら、ノートを開いてあらかじめ準備していた質問を順番に言っていきました。途中、吃ってしまい間があいてしまいました。

自分の顔がどんどん熱くなっていくのが感じられました。しかし、先生や助手の方は私の声が出るまで待って下さり、何事もなかったかのように丁寧に回答してくださいました。

「真剣に課題に取り組んでいる姿に、とても好感が持てました。」

「真剣に課題に取り組んでいる姿が、とても好感が持てました。」
写真はイメージです。

インタビューの後、院内を見学させてもらい最新の医療機器を見せていただき、ドラマの世界のような光景に興奮を隠せませんでした。

私は気持ちが昂ると吃音が出にくくなるタイプなので、院内見学ではスムーズに質問をすることができました。

院内見学が終わり、病院の出口で先生と助手の方にお礼をして帰宅すると、一気に緊張がとけてフラフラになりながら帰宅したことを昨日のことのように覚えています。

その時は、吃音が出てしまった後悔は不思議と残りませんでした。むしろ、1人でアポをとって取材が出来たという達成感が心地よかったことを覚えています。

なにより嬉しかったことが、お礼状の返信に「真剣に課題に取り組んでいる姿に、とても好感が持てました。」と書かれていたことです。

それを見た瞬間、とても驚きました。それまで、吃ってしまうことは相手にマイナスの印象を与えてしまうと思っていたからです。しかし手紙を読んだ後は、吃っても頑張った姿勢はちゃんと評価してもらえることを知ることができました。

吃音があることはマイナスどころかプラスの印象を与えているのかもしれない。

吃音があることはマイナスどころかプラスの印象を与えているのかもしれない。
写真はイメージです。

職場体験のアポ取りや取材経験は、私が社会に出た最初の経験でした。もし、この経験がなかったら、吃音があっても評価をしてもらえると知ることができなかったかもしれません。

私は今、メディアの編集長という仕事についています。吃音があっても、アポ取りや取材ができているのは、あの日の成功体験があったからだと思っています。

もし、今あなたの前に挑戦するべきハードルがあるなら、転んでもいいので一歩進んでみることをオススメします。そうすれば、今までの自分では見ることができなかった光景が目の前に広がっているはずです。

arisa

2歳の頃に吃音を発症した当事者です。
吃音を持つ当事者とご家族が生きやすい社会を目指して、日々吃音の啓発活動に取り組んでいます。HAPPY FOXでは、吃音者として生活してきた経験から、少しでも楽に過ごせる方法をご紹介していきます。

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