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人にはそれぞれ苦手なことがあると思います。私は吃音があるせいか人前に出ることが苦手です。学生のころは特に苦手意識が強く、様々な人に励まされてきました。今回は私が今でも感謝している先生についてお話したいと思います。
人前に立つ日を指折り数えて憂鬱になっていた毎日。
9月になると金木犀の花の香りが街に漂いはじめます。その時期になると私は決まってある出来事を思い出さずにはいられません。
私の通っていた中学校では毎年秋に合唱コンクールが行われていました。隣町の大きな市民ホールを1日貸し切って全校生徒と家族が一斉に集まる大イベントです。
私はこの合唱コンクールが何よりも苦手でした。人前に出ることが苦手な私にとって、大舞台でスポットライトを浴びることなど考えられないことでした。
合唱コンクールは3か月も前から練習をはじめ、直前には放課後まで練習が行われます。リハーサルも入念に行われ、体育館での予行練習もありました。
中学校には金木犀の木が沢山ありました。合唱練習をしているとき、教室の窓から金木犀の香りが漂ってくるたびに、迫ってくる合唱コンクールの日を想像して憂鬱になりました。
「もう少し頑張ってみよう。 」諦めかけていた私に先生がかけてくれた言葉
体育館で合唱コンクールのリハーサルが行われたときのことでした。私は相変わらず額に変な汗をかきながら合唱練習に向かっていました。
いつもは教室で観客がいない状態で練習していましたが、その日は学年全体リハーサルだったので、他のクラスの人々が観客席に座っていました。
私は他のクラスメイトに続いて檀上に上がろうとしたときに、緊張で倒れてしまいそうになりました。先生が保健室に付き添ってくれることになり、体育館を後にした私は情けないような、安堵したような変な気持ちでいっぱいでした。
保健室のベッドに腰掛けながら、深呼吸して暫くすると段々と気持ちが落ち着いてきました。先生が大丈夫か、と聞いたとき、私は合唱コンクールで倒れてしまったらどうしようと相談しました。
先生は少し悩んで「やめてもいいけど、せっかくだからもう少し頑張ってみよう。」と言いました。先生の言うことに反論もできない私は、ただ頷くことしかできませんでした。
緊張がほぐれ、自分の力を出し切ることができた!
合唱コンクール当日、私はまな板の鯉のような気持ちで隣町の市民ホールに向かいました。私は朝から緊張して倒れないかばかり心配して、友達との会話も半分上の空でした。
私たちの学年の発表になりました。発表の時間が近づくと、舞台裏の控えスペースを通り、ステージに移動しました。ステージには沢山のスポットライトがあって顔がどんどん熱くなっていくのがわかりました。
アナウンスが流れ、いよいよ舞台幕が上がると観客席から割れんばかりの拍手が沸き上がりました。幕が上がって私は少し拍子抜けしました。
私の想像では、観客席に座っている人の顔がこちらを一斉に見ている光景が広がっていたはずでした。しかし、会場は照明が落ちていたので、観客席は真っ暗で人がいるかどうかすら分からなかったのです。
私はそれを知って今までの緊張がほぐれ、思い切り歌うことに集中することができました。コンクールの結果は残念ながら優勝は逃しましたが、大勢の前に立つことができて自信を持つことができました。
あの時、諦めそうになっていた私の背中を押してくれた先生には感謝してもしきれません。
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