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吃音当事者の中には声が通らないことに悩んだり、声が小さいと言われたりする人も少なくないと思います。私も声が小さいことに悩む1人でした。私はある経験を通して、工夫をすれば大きい声が出せることに気が付くことができました。今回はその体験談をお話したいと思います。
中学1年生、友達と一緒にバザーのお手伝いに挑戦!
私が通っていた中学校では、毎年秋にPTAバザーが開催されていました。学区内に住んでいる人が賑わい、小さなお祭りのようなイベントでした。
中学1年生だった私と、同じクラスメイトの太田さん(仮名)はある日、学校の廊下に張り出された「バザーボランティア募集」の張り紙を見てバザーのお手伝いをすることに決めました。
ボランティア内容はお店の呼び込みやお客様対応など簡単な業務で、中学1年生の自分たちにもできそうだと思ったからです。
申し込みを済ませて、私たちは小物やアクセサリーを売るお店のお手伝いをすることに決まりました。
「もっと声出してくれる?」呼び込みで声が出ず友達がイライラ…
PTAバザー当日、太田さんと校門の前に待ち合わせをしました。普段は学校の制服姿を見慣れているだけに、お互いの私服を見て盛り上がりました。そして、バザーを元気に盛り上げようとお互いに励ましあいました。
バザー会場の体育館につくとオープン前にも関わらず、たくさんの人で賑わっていました。学区内のイベントなので、クラスメイトとすれ違うこともありましたが、荷物運びやお客様の誘導で時間はあっという間に過ぎていきました。
準備がひと段落すると、PTAのスタッフの方から店番を頼まれました。太田さんと私はそれぞれお店に人を集めるために声を出しました。
会場はとても賑やかだったので、声を張り上げても人の話し声や、他のお店の呼び込みの声でかき消されてしまっていました。
太田さんは部活で掛け声を出すこともあり、大きな声を出すことが得意でした。一方で私は吃音があり、自分の声を聞かれないように普段から小さい声で話すようにしていたので、大きい声をだすことが得意ではありませんでした。
「奥村さん、もっと声だしてくれる?」太田さんがイライラした声で言いました。私は精いっぱいの声量で呼び込みをしていただけに、悔しい思いでいっぱいでした。
「声を揃えて呼び込みしてみたら?」声が出ず悩む私へ先生からの提案
私は当時、自分の吃音について誰にも相談することができていませんでした。そのため、太田さんにどう説明すればいいか悩んでいたとき、バザーの担当をしていた先生が私たちのほうにやってきました。
「太田さん、奥村さん、順調に進んでる?」
「順調もなにも、奥村さんが全然声を出してくれないんです」太田さんが先生に訴えました。
先生は少し首をかしげて暫く考えていました。そして、思いついたように私たちに提案をしました。
「会場が賑やかだから、声がかき消されてしまうのかもしれないね。2人一緒に声をそろえて呼び込みをしてみたらどうだろう。」
声を揃えた呼び込み作戦開始!店は大繁盛に!
太田さんと私は別々に呼び込みをしていましたが、先生の提案通りに一緒に声を揃えて声を出してみることにしました。すると段々とお店に人が集まってくるようになりました。
お店に戻ってきたPTAの方もお店の大繁盛ぶりに驚きつつ、私たち2人を褒めてくれました。太田さんもお店に人が来てホッとした様子で、私も罪悪感が取れました。
結果的に、たくさんの人がお店に来ていただいたおかげで、一日の終わりには棚の商品をほとんど売ることができました。一日中立ちっぱなしで棒のようになった足で歩きながら、今日は楽しかったね、と太田さんと一緒に笑いあうことができました。
声がでなくて困っていたときに、声を揃えてみることを提案してくれた先生や、それに賛成してくれた太田さんの存在なしではPTAバザーを成功させることはできませんでした。私が吃音を抱えながらも、いろいろなことに挑戦できるようになったのは周りの方のおかげです。
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