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学生時代の吃音の経験とNPOにかける思い
初めまして、やっちと申します。製薬会社で研究員として仕事をしています。今年で29歳になりました。両親によると、3歳のころから吃音があったようです。
「吃音で友達ができない。孤独な学校生活を送っている。」
私はこのような状況にいる人の助けになりたいと思い、NPOに参加することを決めました。今回は、私がこのような思いを持つきっかけとなった学生時代について書きたいと思います。
孤独だった高校時代
中学1年生までの私は、話すことが好きな子供でした。吃音を気にしてはいましたが、吃って笑われることよりも友達との会話を楽しむことを優先していました。友達を自然と作ることができて楽しい毎日でした。
しかし、中学2、3年のころから吃音を強く意識するようになり、仲の良い友達以外とのコミュニケー ションをだんだんと避けるようになっていきました。
高校生になり、私は友達を作ることに失敗してしまいました。中学時代の友達とは進学時に離れ離れに なってしまったため、ゼロから友達を作る必要があったのですが、吃音を気にしてしまい、積極的に話しかけることができませんでした。
結局、友達が一人もできないまま高校生活をスタートすることになりました。そして、友達がゼロのまま卒業まで過ごすことになりました。
高校3年間の中で一番つらかった記憶は、2年生の文化祭のときのものです。まず、クラスメイト全員の話し合いで出し物が決まりました。その後、仲の良い友達同士で5人程度のグループを作り、グループごとに仕事が割り振られることになりました。
私は仲の良い友達がいなかったので、みんながワイワイとグループを作っている様子を黙って見ていました。私がひとりぼっちになっている姿を見た誰かが私をグループに誘ってくれるのではないかと期待していたのですが、誰も声をかけてはくれませんでした。
文化祭の準備の時、担任の先生はずっと職員室に行っていたので、先生に助けてもらうこともできませんでした。結果として、私はどこのグループにも入ることができず、文化祭の準備時間に何もすることがないという状態になりました。
そして文化祭の準備期間から当日まで、ずっと図書室で過ごすことになります。最初の内は教室の机に顔を伏せて寝たふりをしていたのですが、しばらくするとみんながワイワイと楽しそうに準備を進めている様子に耐えられなくなってしまいました。
教室から逃げられる場所を探したところ、図書室が開いていたのです。「大学への数学」という雑誌がお気に入りだったので、その問題を解きながら長い時間を過ごしていました。高校時代のことはあまり覚えていないのですが、このときのことは 大きな孤独感とともに今でも思い出すことができます。
孤独な3年間が与えた影響
高校卒業後は、無事に大学に進学することができました。大学に入って間もないころ、私の心の中は「友達を作りたい!」という気持ちでいっぱいでした。
二度と高校時代のような思いをしたくないと考えていました。知り合った人と積極的に話をするように努力して昼食を一緒に食べたり、勉強について相談したりできる 友達を作ることに成功しました。
とても嬉しかったのを覚えています。 しかし嬉しいはずなのに、いくつかの問題に悩まされることになりました。
- 笑顔が上手く作れていないような気がする
- 友達と一緒にいるとき、常に緊張している
- 友達と会う約束をしている時間が近づくと、お腹の調子が悪くなり下痢をすることが多い
- 友達と一緒にいるときよりも、一人でいるときの方が楽しいと感じる
思い出せるものを書き出すと上記のような感じです。次第に友達といることを苦痛に感じるようになり、 友達と距離を置くようになってしまいました。
結局、3年生になるころには自分から進んで孤立することを選ぶようになりました。精神科などを受診したこともないため、この不調の原因ははっきりとは分かりません。
しかし、大学時代 の私の様子を思い返しながら調べてみると「社交不安症」の症状が当てはまる気がします。高校時代の孤独な3年間によって、私は社交不安症になってしまったのではないか。また、大学時代の不調はその影響によるものではないかと考えています。
大学院時代も友達はできなかったため、孤独ではありましたが一人の時間が多かったこともあり研究や勉強に打ち込むことができました。そのおかげで、研究室の恩師に現在勤めている会社の研究職を紹介してもらえることになりました。
就活に大きな不安があった私は、このチャンスを逃さないために吃音があることを隠すという選択をします。結果として、入社はできましたが罪悪感のようなものを抱えることになりました。また、今でも吃音を隠しながら毎日を過ごしています。
これまでにカミングアウトを何回も考えましたが、吃音があることを上司や幹部がどう思うのかを想像すると怖くなり、実行できていません。
吃音者の役に立ちたい
私が過去の経験から最も伝えたいことは「学生時代の孤独感が人生に与える影響はかなり大きいのではないか」ということです。高校時代に感じた孤独感は大学時代に大きな影響を与え、社会人になった今でも人とかかわる際の不安感として残り続けているように感じています。
このことから、孤独な学校時代を送っている人がいれば助けてあげたい、そして私と同じような思いをする人を減らしたいと考えるようになりました。吃音があることにより積極的に会話をすることができず、孤立してしまう吃音者は少なくな いのではないかと思っています。
私はまだ吃音を克服できていません。克服できていないにもかかわらず、人を助ける側に立っても良いのだろうかと考えることもありました。
ただ、克服できていないからこそ吃音者を助けたいという気持ちが風化することなく、熱意を保ちながら活動に取り組むことができると思うのです。この記事から、私の思いの一端でも感じ取っていただけたのでしたら幸いです。
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